マトリックスの色の違い
ちょっとブレイクで、去年18年ぶりに新しいシリーズが公開されましたマトリックスで、画像処理が関する面白い記事を見つけました。
The Matrix looks dramatically different on Hulu versus on HBO Max - echevarria.io
マトリックスを配信しているストリーミングサービスHulu*1とHBOMaxの映像が全然異なるのだそうです。
比較したシーンを見ると、Huluの方が緑ががっていて、HBOMaxの方は暖色系の色味になっています。
私の記憶ではマトリックスといえば緑の(Huluの映像に近い)イメージでしたが、元々1作目はニュートラルで温かみのある色合いで、DVDは初期の色合いが収録されていましたが、2作目の色合いに合わせてBlu-rayでは緑がかった色味に変更されたものが収録されたそうです。
なのでHuluはDVDバージョンを配信していて、HBOMaxはBlu-rayバージョンを配信しているので色味に違いがあるのではという話でした。
そんなこだわりの調整がされているとは知らなかったので、とても面白い深い記事でした(オリジナルバージョンも見てみたいです)。
この記事ではマトリックスの映像のもう一つ違いが指摘されていました。
明るさの違いです。Huluはハイライトもシャドー部も自然な表示(ハイライトが白飛びせずシャドー部が引き締まっている)になっていますが、HBOMaxはハイライトが飛んでいてシャドー部も浮いているように見えます。
本当の理由はわかりませんが、HBOMaxの方はHDRモニター用に調整された映像が配信されているためではと言われています。
撮影した映像はそのままモニター表示すると、暗くてコントラストの低い見にくい映像です。
モニターで適切に表示するために撮影した信号を、モニター表示用に変換することをガンマ補正といいます。
HDRはHighDynamicRangeの略で従来のモニターよりもより幅広い範囲の輝度を表現できる技術です。従来の方式SDR(StandardDynamicRange)で最大300nitの明るさを表現できていたのに対し、HDRテレビの最大輝度は1000nitまでと言われています(今のところ)。
2つの方式で表現できる明るさの範囲に違いがあるので、それぞれのモニターに合わせたガンマカーブを適用しないと適切な表示になりません。
上の図※のようにHDRモニター用のガンマカーブを適用した映像(青線)を、SDRモニターで表示すると300nit以上は白飛びしているように見えてしまいます(オレンジ線)。※例で適当に作ったグラフなので正しいグラフではありません。
HDRモニター用のガンマカーブ(青線)をSDRモニター用に300nitで飽和しないように作ると以下のオレンジのグラフになります。
将来HDRモニターがスタンダードになってくればこういう問題はなくなるはずですが、今はどちらも混在しているのでこういう問題が出てきしまったのかもしれません。
HDRのトーンカーブを適用した映像をSDRモニターで見た場合、ハイライトが飛びやすくなってしまうというのは納得できたのですが、シャドー部は共通なのでシャドー部が浮くというところは説明がつかず、ちょっとモヤモヤしました。